小室哲哉の音楽と引退

実は小室哲哉の音楽は自分の音楽好きのルーツになっている。

兄と姉の影響で、随分と小さな子供の頃から少し大人びた、といっても小学生が高校生の音楽を聴く程度だけど、いろんな音楽を教えてもらった。
当然、兄姉の世代なので、自分の世代では周りが聴いていないような音楽だった。
それが小室哲哉だった。

最初に聴いたのはTMネットワークだった。





兄も姉もどちらも小室哲哉を好きだったので、CDがたくさんあったし、音楽雑誌もたくさんあった。
確か「PATI PATI」と「GB」だった。今はどちらも廃刊になっている。
TMはテレビでも見るようなポップスバンドだったが、その頃流行っていた音楽の少し異端な存在だったと思う。
ポップスなんだけど、他に替えがないポジション。多分それは小室哲哉の音楽の吸収と表現によるものじゃないだろうか。
TMが解散した後、今度はTRFが活動しはじめ、誰もが知るような90年中盤のTKブームがやってくる。




80年台までのダンスと違った、今まで日本人に馴染みのなかったダンスミュージックをポップに解釈した「小室サウンド」。
歌モノによる完全なダンスミュージックを日本の基礎にしてしまった。
ジャングル、トランス、ユーロビート、馴染みのないジャンルを輸入し瞬時に定着させた力。こんなことした人は後にも先にもいなかった。
それからの活躍は知らない人はいない。

その少し後に、今も小室哲哉の所属しているglobeがスタートする。コレにハマった。
ラップと歌のスタイルの音楽としてもかなり早い。そして最も成功したグループだ。



世間的にもglobeの小室哲哉、というのが一番定着しているのではないか。
いろんな音楽を経た集大成的なポップスがここに集まっていて、完成度が非常に高い。
徐々に活動が沈静化していくことになるが、後半の楽曲は小室哲哉が本当にやりたかったことにシフトしていった印象がある。
特に上の「genesis of next」はもう知らない人はいないというほど売れた曲ではないけど、ヨーロッパから継承したトランスのエンドレスなDJ的曲の構成は小室哲哉の本領だ。
本当は歌もいらないんだと思う。でもちゃんと歌モノにできる力をもっていたし、セールスにも繋げられる。
この楽曲に関しては、2018年現在の音楽シーンにおいてEDMと称されるジャンルを15年も前に実現しており、また古臭さがない。

globeの活動の後、小室哲哉の音楽を聴かなくなった。
自分も大人になって多様な音楽を選ぶようになっていたし、小室哲哉の音楽性に飽きたのもあったかもしれない。
ただ、たまにiPodでTMを聴いていた。それくらいだった。



世間は小室哲哉の音楽を「90'sの遺物」のように扱うようになった。少し嘲笑するような表現だ。周りの人もそうだった。メディアもそうだったろう。
「TK」をバブリーの象徴のように扱い、自分が小学生の頃から聴いてきたものをバカにされるような気持ちになった。
ずっと聴いてきたという事実も恥ずかしくて、おおっぴらにできなかった。
そこへきて2018年1月の引退。





昔に比べて表舞台にはあまり出てこなかったので久しぶりに本人を観たが、とても歳を取ったと感じた。
そして昔と変わらず正直な人だと感じた。
過去の詐欺事件の際にも、その印象は感じていた。どうやら心の弱い人であり、頼る人に依存してしまう傾向にあるようだ。
恋人や前妻に関してもそうだし、今回の引退も同じようなことが起きた。

妻KEIKOの病気は良くならない。「妻」としては「機能」しないし、自分も「夫」としての「機能」はもうない。
とても悲しい関係性になっていた。ところが、愛情は深くなったという。

小室哲哉はKEIKOをいわばピックアップした形でglobeを結成し、自分の子供のように育ててきてゆくゆくパートナーにした。
今、大人には戻らないKEIKOをまた子供のように感じている。
C型肝炎を患い、今も闘病中だということだが、その時に今度は看護師に依存するようになった。
それは介護疲れとも言えた。
一般的な「不倫騒動」として捉えていいかどうかは曖昧になった。


引退はとても悲しいことだ。誰が引退する時もそうだけど。
セールス的な束縛がなくなった今、本当に楽しく仕事をしているような気がしていた。
いろんなことがあって、ようやく落ち着いていた。しかし本人は辛いさなかにあった。
それだけに悲しい気持ちになった。
聴かなくなった今もそっと音楽活動をしていてくれればそれで満足だった。

引退しても音楽は作り続けていくと思う。KEIKOは関心がなくなってしまったけど、彼はなくなっていない。
彼が復帰するかどうかは周りの声次第だ。
自分にとって今の小室哲哉の音楽は聴かないものだけど、自分の基盤を作ってくれた音楽家の一人だし、この先も聴き続ける音楽。




どうでもいいけど、TMのファミコンは隠れた名作だと思う。




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