NIKE ACGから見るリバイバルブームの始まりと終わり



ファッションの歴史は繰り返す


何年前からか、ファッションの世界でグローバルなリバイバルブームが起きた。
このブログでは何度か触れてきたことではあるが、モードやラグジュアリーなブランドとストリートが近接したことから徐々に規模を広げ、ハイブランドがスニーカーを作ったり、スポーツブランドと協業したりすることが当たり前のようになってきた頃からその傾向が出てきたように思う。

洋服が好きな人ならどこかのタイミングで気づくことだが、ファッションのブームは、基本的にローテーションを繰り返しながら進んでいく。
尖ったファッションの次は、素朴なファッション。シンプルなファッションの次は派手はファッション。丈が長かったら短かったものへ変化する、といった具合。
そしてこの数年は90年代ファッションの台頭が目覚ましく、80年代のものにまで手が伸びている。

ハイブランドがそういったものに着手するたけでなく、ファッション性も兼ねたスポーツブランドも同じ潮流にあって、先日NIKEが発表し、即完売したNIKE ACGは90年代の、特に日本のマーケットを象徴するようなコレクションだった。







目立つカラーとグラフィックがリバイバルにマッチ


NIKE ACG(ALL CONDITION GEAR)はNIKEがトレッキングやアウトドアのシーンを想定したラインで90年代の日本ではBoonやCOOL TRANS、Smartなどファッション誌がこぞって取り上げたことも一役買って、マニアックなブームとなった。
見た目の派手さにも意味があり、自然の中でも目立つ蛍光カラーをベースとなるアースカラーに差し込んだカラーリングが最大の特徴である。

一旦はなりを潜めたACGだが、2015年頃にACRONYMのデザイナー、エロルソン・ヒューをデザイナーに招き、無駄がなくソリッドで機能的なACGとなって再誕、こちらも大人気となった(2018年で契約終了とのこと)。
おそらくオリジナルのACGを知るのは30代以降のおじさんが大半だろうが、その層はオリジナルの復活を期待していたことだろう。僕もその一人だった。

ただ、この復刻は極めて小規模で、NIKE.COMと海外のセレクトショップHAVEN、日本ではBEAMSの一部店舗が中心であり、ロットは極めて少なかったと思う。
が、リバイバルの一つのターニングポイントと思えるACGはどうにかゲットせねばとTシャツとショートパンツのみ入手した。

色合いはシンプルとは呼べず、ファッション的には合わせづらい方かもしれないが、「懐かしのあのアイテム」なので、かっこいいとかかっこわるいとかいう問題ではなく、手元に置いておきたい物質主義的な年齢なので欲しいというだけである。
夏物だから多少派手でも良いし、ビシッと決めるものでもないのが救いだ。
リバイバルの影響で我々のようなノスタルジーをもっていない10〜20代前半の人にはフレッシュに見えているはず。そういう意味では世代を超えて評価された。







NIKEとしては異質なディテール


アウトドアのプロフェッショナルには当時、一定の評価を受けた。
なぜならレザーのゴツゴツとしたブーツしか選択肢のなかったトレイルランニングやハイキングの世界に、スニーカーの履き心地と軽さがやってきたから。
マジ登山じゃなくて山歩きくらいならばACGはとてもちょうど良かった。加えて街歩きでも目立つことができたし、快適さもあった。
今回、残念ながらスニーカー群が入手できなかったが、Tシャツとハーフパンツを買えたので、その話をすると、まずTシャツに関して、機能的な部分は特にない。
ファッション的側面が強く、ビッグシルエットの流れを受けてかやたら大きい。Lサイズで着丈が85cmくらいある。女の子がワンピースにできるレベルである。
縫製が特殊で、インラインのNIKEよりもタフだし、肩がドロップショルダーを想定してある。結構かわいい。

ショートパンツは実用性が高く、合計3つあるポケットは全てファスナー開閉。バックポケットは底が浅いため、カードくらいのものしから入らない。僕の場合はカメラのレンズキャップの収納にちょうどよく使えている。
また、表地は厚手のポリエステルツイルだが、内側にメッシュを貼ってあるため、ベタつきなく快適。フェスやキャンプの時は特に使えると思う(火には弱いのでバーベキューなどでは注意が必要)。







意味のある復刻


これらが他のリバイバルと少し違うのは、実用性を備えていたことだった。
意味のないプリントやデザインが潤沢にあった80〜90年代のファッションの中で、アウトドアにフォーカスし、意味のある派手さをもっていた。さらにエロルソン・ヒューのミニマリズムとは相反したコンセプトであり、その対比(ハイテクとアナログ)を表現できた。そしてファッションシーンの中に無理なくローンチし、話題をさらった。

個人的には、ここからリバイバルは少しずつ終わっていくと思う。ルイヴィトン×シュプリームのように「あれやっちゃったらもう終わりかな」みたいなものがある。
スニーカーで言えばダッドシューズがちょっと流行ったが、ちょっとに終わった印象があるのは「やっちゃったかな」というピークに達したからだと思っている。

ピークに達すれば次の何かを見つけるしかない。
ACGは90年代から10年代に復活したエヴァンゲリオンのようなもので、もう殿堂入りだ。
NIKEはそれを間違えなかったと実物を見て感じ取れた。



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